ニュースの概要
クラウドファンディングサービスのREADYFORで、オムツ交換を手伝うロボットを開発したいという挑戦が資金を募っている。介護の現場では、排泄の世話が職員にとって体力的にも精神的にも重い仕事の一つである。この構想は、その作業の一部を機械に任せ、介護する人とされる人の双方の負担を減らそうとするものだ。大手メーカーの製品開発とは違い、現場の困りごとから出発する小さな挑戦が、公開された資金募集という形で世に問われている点が特徴である。ここでは、この動きが介護ロボット市場や施設運営に何を意味するのかを考えたい。
引用元: オムツ交換を手伝うロボットを開発したい - クラウドファンディング(READYFOR)
分析・見解
排泄ケアが介護で最も機械化されにくい理由
介護ロボットは、移乗(ベッドから車いすへ移す動作)や見守りの分野では少しずつ導入が進んできた。一方で、オムツ交換はほとんど機械化されていない。理由は単純で、作業が難しすぎるからである。
オムツ交換では、寝ている人の体の向きを変え、汚れを拭き、新しいオムツを当てる。体格も、麻痺の有無も、皮膚の状態も一人ひとり違う。しかも相手は人の体であり、わずかな力加減の誤りが痛みや皮膚の傷につながる。工場のロボットのように同じ動きを繰り返せば済む仕事ではない。
全自動を目指さず補助に徹する設計が現実的
今回の題名にある「手伝う」という言葉は、実は重要な示唆を含んでいる。全部を機械に任せるのではなく、人の作業を助ける位置づけだからだ。
たとえば、体を横向きに保つ、持ち上げた腰を支える、といった力仕事だけを機械が担う方法がある。拭き取りや装着の判断は職員が行う。こうして役割を分ければ、技術的な難しさは大きく下がる。介護ロボットの先行例を見ても、完全自動をうたった製品より、人の動きを補助する製品のほうが現場に残りやすい傾向がある。
資金調達の方法が示す、開発側の弱点と強み
大企業ではなくクラウドファンディングで資金を集める点にも意味がある。医療機器や福祉用具の開発は、試作から安全試験、販売までに長い時間と多額の費用がかかる。小さな開発者にとっては、この途中で資金が尽きる恐れが常にある。
反面、支援者の声を直接集められる利点もある。実際に介護をしている家族や職員が支援者になれば、それ自体が需要の証拠になる。出資額の大きさより、どんな立場の人が応援しているかのほうが、製品化の見通しを占う材料になる。
本当の壁は、技術よりも使う人の気持ちにある
見落とされがちなのが、される側の心理である。排泄の世話は、本人にとって最も恥ずかしさを伴う場面の一つだ。機械が相手なら気が楽だという人もいれば、機械に触られることに強い抵抗を持つ人もいる。
技術が完成しても、この心理的な受け入れが進まなければ普及しない。逆に、人に頼むことに申し訳なさを感じてきた人にとっては、機械のほうが気兼ねなく使える可能性もある。ここは試作の段階から、実際の利用者の声を聞いて設計に反映できるかが勝負になる。
ビジネスへの影響
導入を検討する施設が今から確認しておくこと
介護施設の運営者にとって、排泄ケアの機械化は人手不足対策として魅力的に見える。ただし、導入の前に確認すべき点がある。まず、職員一人あたりの交換回数と所要時間を実際に測っておくことだ。数字がなければ、機械で何分短縮できたのかを評価できない。
あわせて、介護ロボット導入の補助金制度の対象かどうかも調べたい。国や自治体の支援を使えれば、初期費用の負担は大きく変わる。製品が出てからでなく、開発段階から情報を集めておくと動きが速くなる。
開発や投資を考える企業にとっての狙い目
介護ロボットに関わる企業にとっては、機械そのものよりも周辺に商機がある。たとえば、排泄の状態を知らせるセンサー、使い捨て用品の供給、職員向けの研修、利用者の同意を得る手順づくりなどである。
本体の開発は難しく、競争も激しい。一方、現場で使うための手順や教育は不足しており、参入の余地がある。クラウドファンディングで生まれた小さな開発者と組み、販売や保守の部分を引き受ける形も現実的な選択肢である。大企業が中小の挑戦を支える形は、今後増えていくだろう。